大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

神戸地方裁判所 昭和45年(行ウ)17号 判決

神戸市東灘区御影塚町二丁目二番二七号

原告

正岡重倫

被告

大阪国税局長

吉瀬維哉

右指定代理人検事

大村須賀男

同法務事務官

蔵本正年

藤田光正

同大蔵事務官

多田稔

奥田五男

鈴木淑夫

右当事者間の昭和四五年行(ウ)第一七号裁決取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は「被告が昭和四五年四月二四日原告に対してなした昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの所得税の審査請求に対する裁決は、これを取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、「原告は繊維製品の輸出販売業者であるが、昭和四一年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度所得金額を金一二三万一六〇五円として芦屋税務署長に対し所得税の申告をなしたところ、同署長は昭和四二年一一月二五日原告の所得金額を金二七〇万一一八四円とする旨の更正処分をしたので、原告は同年一二月一一日同署長に対し異議申立をしたが、同署長は昭和四三年三月二日異議申立を棄却する旨の決定をなした。そこで、原告は同年四月一日被告に対し審査請求をしたところ、被告は原告に対し、昭和四五年四月二四日付で右審査請求に対する裁決書謄本を送付した。しかしながら、右裁決には次の違法がある。すなわち、右裁決はその理由中において、『必要・経費の仕入金額のうち、昭和四〇年一二月二七日支払の気谷修正よりの仕入金九一万四二五〇円は昭和四〇年度分の売上原価であるから、認められない』としているのであるが、原告は右取引を昭和四〇年一二月分の仕入として申告しており、昭和四一年度分としては申告していないのに、何等の問合せ或いは調査もしないで、右取引を裁決理由として処分したことは、明らかに行政不服審法第二五条第一項に違反するものである。よつて、被告のなした右裁決の取消を求める。」と述べ、被告の主張に対する答弁として、「原告が昭和四五年四月二五日に本件裁決書謄本を受領したことは認める。」と述べた。

被告指定代理人は「主文第一、二項と同旨」の判決を求め、その理由として、「被告は昭和四五年四月二二日原処分の一部を取消す旨の裁決をなし、この裁決書謄本は同月二五日原告に送達された。そして、原告が右裁決処分の取消を求めて本件訴を提起したのは、同年八月二六日であるから、本件訴は行政事件訴訟法第一四条第一項所定の出訴期間を経過してなされた不適法な訴である。」と述べた。

理由

被告主張の出訴期間徒過の点について判断するに、被告のなした本件裁決の裁決書謄本が昭和四五年四月二五日原告に送達されたことは、当事者間に争いがなく、原告が右裁決処分の取消を求めて本件訴を提起したのが同年八月二六日であることは、当裁判所に顕著な事実である。そして、特段の事情なき限り、右裁決書謄本が原告に送達された日に、原告は右裁決のあつたことを知つたものと認めるべきである。そうすると、原告は行政事件訴訟法第一四条第一項に規定する三箇月の出訴期間を徒過して本件訴を提起したこと明らかであるから、本件訴は同法第一四条第一項に違反する不適法なものとして、これを却下することとし、訴訟費用の負担につき、同法第七条・民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂上弘 裁判官 下江一成 裁判官 伊東正彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例